バブル崩壊後の経済と現在の国際情勢

 1985年のプラザ合意でバブルが起こったわけだが、バブルを潰しておかなければいけないと考えたのは責められないし、バブル後再建の自民党政策に関して、失敗とか言っても、政権交代すればいいだけなのにそれができなかった力学は、誰を責めてもしかたがない。国労を潰してJRを民営化して労使交渉を根絶やしにし、政権交代への道を難しくした中曽根が敵ながらあっぱれで、黒字をこしらえてプラザ合意を招きバブルに至ったのもやはり彼の有能さが裏目に出た結果である。そういう彼の政策は冷戦構造で資本主義の欠点が目眩ましされていたことが原因で、バブル後も不況になるほど人々は保守党に頼り、労使交渉がないから産業空洞化に歯止めがかけられなかった。企業は競争原理で動いてるから海外投資へ逃げてもしかたがない。バブルは普通放っておけばなおるが、だめだとなれば投資も消費もどんどん逃げる。わるくなればなるほど遠のく。更にわるくなる。悪循環である。それまでずっと良かっただけに、心理面の打撃も大きかった。そのため産業空洞化に繋がったが労使交渉の手段がないから賃金が上がらず、与野党も手が出ない。その後も異次元の金融緩和で賃金が上がらないので有効なインフレが起こらなくて失敗とみなされているが、労使交渉が健在なら賃金は上がった。大企業は海外純資産でしこたまカネを持っている。しかし一社だけ賃金を上げたらその分もだが下部の取引先みたいなところもならばもっと高く買えとか言ってきて潰れてしまうから皆やらない。競争原理だからしかたがない。国労を潰されたりその前にも労働運動が敗北して公務員のスト権もないという状態が野党もだらしないという評価に繋がった。与党が失敗しても政権交代に繋がらない。こういうことは原理的には冷戦構造下の資本主義の方がマシという、人々の心理も大きい。

 現在の非正規雇用の実態の主流としては再就職の女性がターゲットだと思われる。正規ほど残業その他なく家庭と両立可能だということだろうが、専業主婦では彼らはやっていかれないわけである。私はジェンダー論を下手に振り回すよりは、専業主婦でも十分食っていけるという方が産業構造としてはマシなのではないか、結局正規では家庭と両立できなくてやめた女性が食い物になっていると思う。老人も働かされて、こんなに仕事があるのに景気が良くないわけないというのが、なぜこんな経済になるのか。新自由主義などの弱肉強食が行き過ぎた結果だろう。冷戦下、社会主義と戦うために資本主義は労働者を食わせたわけだが、冷戦構造は崩壊してしまった。国際競争だけが残った。資本主義が本性を表し、営利むき出しになってしまったのではないだろうか。

 現代のヘゲモニーの移行は、中国が覇権主義を取らないので多極化に繋がっている。アメリカが中国のように人気を得るには従来の覇権主義からの脱却が必要だが、そういう長期的なアメリカの利益は、個人としての寿命から短期的利益に結びつかざるをえない投票者の意向で必ずしも安泰ではない。そのため短期の利益を追求しながらヘゲモニーの存続を望むとコンフリクトが生ずる。しかしそれはおそらくヘゲモニーの移行に逆行するものにはならない趨勢だろう。アメリカは勝ち組で居続けたという意識から心理的に押せば勝つという意識が濃厚だが、イラク戦争で中露の連帯を強固にしたように、ウクライナ戦争でインドや中東、アフリカ全域を敵に回し、そのためにドル崩壊を招き、今後も覇権主義を進めるとこの傾向に歯止めがかからないだろう。しかし資本主義の競争原理でおそらく動くから、より世界に敵対的となりヘゲモニーの移行は逆に明確になって行くのではないか。すったもんだはあるかもしれないし、高度資本主義は進行するのだろうし、独占資本のヘゲモニーに対する執着があるから無理を通そうとするかもしれないが。